ハイブリッドIT 【2章】3方式

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 ITコーディネータ 神﨑 勝利

 ハイブリッドITの実現方式は1つではなく、少なくとも3つの方法が考えられるので、これらを紹介しておこうと思う。紹介する方法を含め、どのような方法を採択するか、または、新たな方法を取るかは、以下のような要素を検討材料にして、要因分析してみると良い。

 1.IT導入方針

  a)スクラッチドシステム

  b)シェアードシステム(ERP含む)

 2.IT導入期間

  短期間の場合、平行して進行するタスクが多くなり、パラレル方式が向いている場合が多い。

 3.プロジェクト編成

  プロジェクト・チームの編成・役割によっては、企業や人材の得手・不得手を考慮して決めると良い。

  関わる人のコミュニケーション密度・頻度が進行に影響することがある。

  ・クライアント(経営・IT・現場)

  ・コンサルタント(戦略・IT)

  ・インフラベンダー(ハード・ソフト)

  ・開発ベンダー(設計・開発・検査)

  ・PKGベンダー

 

 

2-1.シリーズ方式

 シリーズ方式(直列方式)は、コンサルティングの局面と、エンジニアリングの局面を明確に分け、例えばフェーズの切れ目で引渡しを行い、成果物および責任範囲を工程によって重複なく分ける方法である。

 コンサルタントは、IT戦略策定とIT資源調達までを行い、ベンダーが決定した時点で、それまでに策定した計画や、設計した業務定義などを説明し、引き継ぐ。引き継いだベンダーがIT導入フェーズを執り行うことになるが、この方式は、引継ぎの負荷が高く、完全性の保証が困難であることが多い。IT導入の初期工程にあたる要件定義までは、コンサルタントがレビューして品質担保の支援を行うことも採るべき措置になることもあるであろう。

 この方式のメリットは、クライアントから見たときの頼り先の明確化にある。しかしながら、導入以降のクライアントの管理負荷は高く、プロジェクト・マネジメントを完全に行える人材がコンサルティングを受ける段階(IT戦略策定フェーズ等)から、プロジェクト参画していることが望ましい。

このような人材のいるクライアント企業では、ITサービス活用フェーズでの主体的運用を目指す意味では、管理負荷を受け取る苦労の意味合いも大きいものになるであろう。

ただ、その負荷を過小評価し、受け止めきれていない場合、運用になって初めて失敗に気付くケースもあることを充分注意して頂きたい。IT導入フェーズは、開発ベンダー任せにして、レビューやテストにも参加意識が低いクライアントに見受けられることが多い。しかし、発覚したときには残念ながら、「時既に遅し」である。この方式の多くは、コンサルタントとエンジニアが別の企業であることが多いが、1社で行うことができる企業であれば、相互チェックの意味もあるので、決して必ずしも悪い手法とは、言えない。 

 

2-2.パラレル方式

 パラレル方式(並列方式)は、コンサルティングとエンジニアリングが同時進行する時期がある方法である。ITコーディネータのガイドラインでは、この方法が推奨され、そのための研鑽を積むことになる。

 この方式は、フェーズをまたがり、コンサルタントとエンジニアが適材適所、得意分野を活かしながら関わっていくことになる。ある意味、理想的ではあるが、1社でのサービス提供が基本になると考えるので、適用局面を間違えると、サービス提供会社の収益性を圧迫してしまうなどの弊害もあり得る。例えばエンジニアは、IT導入フェーズ以前もレビューなどに参加することが多くなり、期間従事でないにも関わらず、お呼びが掛かることが多くなる可能性がある。そのために別の従事プロジェクトとの工数バランスが崩れたりすることもあるので、クライアント、コンサルタント、そしてエンジニアの3者が参画の方法や深さなどの取り決めと理解を深め、相互援助の精神で進められるように下地を作っておく必要がある。最低限の取り決めについては、契約にも謳っておくべきであろう。やるべきことが行えなければ、信頼感にひびが入り、全ての動きに鈍さが生じる。

 

2-3.スプリット方式

 スプリット方式(分割方式)は、パラレル方式の一種で、コンサルティングとエンジニアリングが、同時並行で行われる局面がある、というのが前提ではあるが、これらを執行する2者が別の企業であるというスタイルも重要なポイントとなる。コンサルタントとエンジニアの近過ぎない距離感と各々の立場の独立性を保つことにより、活動もシビアになり、より精度の高い業務構築が行いやすくなる。 

スピリット方式を採る場合、重要な役割となるのが、IT導入フェーズにおけるプロジェクト・マネージャの存在である。両者の言い分、主張を調停し、時には、プロジェクト・オーナーへの意思決定依頼も行う立場となる。パラレル方式では、コンサルタントがプロジェクト全体を牽引することが一般的と考えられるが、スピリット方式においては、この立場や役割が異なることになるので、充分な注意が必要である。プロジェクト・マネージャも独立した存在であることが望ましいが、理想的な編成が行えない場合は、クライントにこれを推進できる人材が必要であると考えておいたほうが良い。

多くの立場を分割することになるので、独立性が保たれる反面、どうしてもコスト高になることが予測される。また、各々の提供するサービスの範囲、提供する成果物なども複雑化することが多くなる為、同時に契約の複雑性も増すと考えておいたほうが良い。可能であれば、複数の契約の法的な整合性や妥当性を担保することもお勧めしたい。いずれにしても、事前の各社の納得性は重要さを増すことになる。

 

ハイブリッドITの方式を3つ紹介したが、今後も発展的に増えていくことが想定される。しかしながら、個別の方法の多くは、提示した方式にまた集約されることも想定できる。複雑性は、またシンプルであることを求める。

 

 

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