すばらしい子どもを育てる国”ニッポン”?
2011.2.26ヒト
日本に少子高齢化の時代が訪れ、年々高齢者の人口比率が増えていることもあり、国会では年金問題やこども手当の議論が交わされています。また、少子化の経済的な影響として長期的に見たGDPの減少といった問題は、企業にとっても長期的には海外への進出や移転といったグローバル戦略を推進する一因ともなっているのではないでしょうか。
私には娘がいますので、身近には”子ども手当”に関心があるのですが、先日ふと「少子高齢化」について不思議に思ったことがあります。
よく、「高齢者(満65歳以上)1人あたり何人で支えているか」という話は聞きますが、「子ども(14歳以下)1人あたり何人で育てているか」という話は、私は全く耳にしたことがありません。
ブログでザックリとした意見を書くつもりだったのですが、案の定、根拠となる資料が無く、ついつい政府の統計情報まで調べてしまった結果が以下の表になります。
表:日本における高齢者、子ども1人を支える人数
人口(単位:万人) | 1人を支える人数 | |||||||||
西暦 | 人口総数 | 子ども (0~14歳) |
生産年齢 (15~64歳) |
高齢者 (65歳以上) |
高齢者を支える生産年齢人口 (高齢者1人当たり人数) |
1990年比 | 子どもを育てる生産年齢人口 (子ども1人当たり人数) |
1990年比 | 子供を育てる生産年齢人口と高齢者 (子ども1人当たり人数) |
1990年比 |
1990年 | 12,361 | 2,248 | 8,590 | 1,489 | 5.8人 | - | 3.8人 | - | 4.5人 | - |
2011年 | 12,691 | 1,619 | 8,101 | 2,970 | 2.7人 | 0.5 | 5.0人 | 1.3 | 6.8人 | 1.5 |
2031年 | 11,435 | 1,101 | 6,683 | 3,650 | 1.8人 | 0.3 | 6.1人 | 1.6 | 9.4人 | 2.1 |
参考資料:
・総務省統計局 日本の統計2010 (http://www.stat.go.jp/data/nihon/02.htm)
表1 総人口、年齢3区分(0~14歳、15~64歳、65歳以上)別人口および年齢構造係数:[出生中位(死亡中位)推計]
・日本の将来推計人口(H18年12月推計) 国立社会保障・人口問題研究所(http://www.ipss.go.jp/pp-newest/j/newest03/newest03.asp)
高齢者を支える生産年齢人口(高齢者1人当たり人数)については、ニュースを見ている方なら、ある程度ご存知かと思いますが、2011年は2.7人で1人の高齢者を支えています。20年後の2031年では1.8人で1人の高齢者を支えなければなりません。支えているといっても、主に「年金で」ということになります。自分の老後が心配ですよね。
一方で、今回のテーマとなるのが、「1人の子どもを育てる人数」です。出生率が下がっているという事実からある程度増えているという傾向は想像できますが、人数としては意外と多い印象を受けました。支えているのは、生産年齢人口(15歳~64歳)とした場合、2011年は5.0人で1人の子どもを育てています。20年後の2031年では6.1人で1人の子どもを育てることになります。
支える人として「高齢者」を加えると、2011年は6.8人で1人の子どもを育てています。20年後の2031年では、なんと9.4人で1人の子どもを育てることができるのです。1990年と比較して約2倍の人数です。
そろそろ、気付いた方もいらっしゃると思いますが、日本の国全体からみて、子ども1人に対してサポートできる大人の数が増えているにも関わらず、子どもの置かれている環境は悪化していると思いませんか。最近のニュースでは、学力の低下、学級崩壊などマナーの低下、児童虐待など、子どもに対する評価や置かれている環境は改善されていると思われる方は少ないと思われます。一方で、地域社会から育児についてサポートが少なく、実の親、特に母親に日本の未来を担う子どもを育てる責任が重くのしかかっていると考えられます。
今回、統計情報を分析した結果から、自分の老後の生活だけでなく、自分たちを支える子ども達のことも地域住民、日本国民として、ひとりひとりがしっかり考えていく必要があると改めて感じさせられました。
まずは、今まで以上に「子ども」により関心を払うことから始めてみませんか。
これだけの大人で、一人一人の子どもを育てることができれば、「すばらしい子どもを育てる国”ニッポン”」にだってなれるはずです。